コンピュータの演算によって、シンプルなアルゴリズムから予測不可能な形態が自動的に生起していくことを「生成 (generative) 」ととらえる考え方がある。これは80年代以降、コンピュータの高速化とともに複雑系科学が発達し、人工生命や人工知能研究などの生命理解のための科学研究に用いられてきた。木本圭子はこれまで非線形ダイナミクスの1つの数式をコンピュータにゆだねて生成された形態を、ディスプレイや紙など2次元のメディアを中心に展開してきた。
今回の展覧会dimension rendez-vousでは、立体に実現しえない空間内の自在な広がりをクリスタルガラスに実現する作品を発表している。 クリスタルガラス1つ1つにはそれぞれ異なる3次元の軌道群とその変容が刻印されており、3次元の軌道群を「見る」ことができる。「見える」とはどういうことだろうか。私たちは3次元に刻印された軌道郡とその変容を見ることによって、軌道と軌道との間の空気、「見えない」時空の広がりへの気づきに遭遇する。3次元の軌道群によって露にされたこの時空の広がりを生み出すものは何なのか。それはこの作品を鑑賞する私たち自身の生命なのかもしれない。
dimension rendez-vous
木本圭子個展
会場:ASK? P(B1F)
2011年3月17日(木)~3月26日(土) (祝日開廊 日曜閉廊 最終日17:00まで)
11:30~19:00
http://www2.kb2-unet.ocn.ne.jp/ask/2011/kimoto.htm